[八木一夫「壷」]
八木一夫
口径4.5×巾18.5×高19cm
高台内に「※」と印銘有
八木明箱書
【解説】ほぼ完全な球といっていい円満な形状の上下に、口造と畳付とが立ち上がり、ちょうど丸い提灯のようにも見える姿である。ほぼ同工の作例が《アラレ南蛮丸壷》(1965年)として『八木一夫作品集』に掲載されている。
口縁はあたかも打ち欠いたかのような無造作な仕上げで、自然な波打ちを見せている。表面は無釉で、赤土の肌が土の味そのままに生かされている。内側にのみ灰色の釉薬が施され、壷としての水密機能性を担保しているが、その釉薬が口縁から一筋だけ垂れ落ちるように顔を覗かせており、一種の可笑味を加えている。よくみると、白の釉薬によるアラレ状の点描文様の施される胴の上半分と、それ以外とでは肌質を違えた表面処理がなされており、釉掛けに頼らず土味だけでもって巧みな変化がつけられていることがわかる。
八木の気取らず軽やかな立ち居振る舞いと機知に富んだ話術については、諸家共通して記すところであるが、本作の白い霰文様における角度と高低の微妙な緩急や、口縁から覗く釉薬などにも、そうした愉快な人となりが見え隠れするようである。
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